地元紙も懸念 リニア計画

今日の信濃毎日新聞の「斜面」欄でリニア計画が取り上げられています。

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– 斜面 –

大鹿村は南アルプス赤石岳への登山口である。英国人宣教師ウォルター・ウェストンは1892(明治25)年8月に訪れた。登山前に泊まった宿の主人を後に著書で紹介している。まれに見る紳士だった、と
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隔絶された山奥の村は旅人を温かく迎えた。300年続く大鹿歌舞伎に息づいているもてなしの心だ。その穏やかな人口千人余の村を巨大プロジェクトが揺さぶっている。リニア計画である。南アルプスを貫通するトンネル工事の長野側の掘削口が大鹿だ
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15人ほどの集落、釜沢地区には坑口や工事用ヤードが設けられ、工事が始まれば大型車両が頻繁に入る。赤石岳に源を発する小渋川には長さ約170メートルの橋が地上から60~70メートルの高さに架けられる。環境や景観、何より静穏な暮らしを守れそうにない…。住民の不安や心配は切実だ
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JR東海は住民の声に十分応えてきたのか。工事用車両が通る道路の改良は後回しになった。要望が出ていた小渋川の橋の地中化も受け入れていない。上蔵(わぞ)地区では住民が心のよりどころにする福徳寺(重要文化財)の脇を工事車両が行き交うことになる
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電車が発車時刻を過ぎたり満員になったりして乗客を全員乗せずに発車する。それになぞらえ論議を尽くさずに実行に移すことを「見切り発車」という。国家的事業だからと先を急ぐあまりに村の誇りや幸せを置き去りにしてはいけない。