地元探訪~かつての修験道を訪ねて~「天子岩編」

野鳥のさえずりで目覚めた。谷底の朝はゆっくり時間が流れる。

あたりは明るいが、太陽の陽射しが注ぐまでにはもう少し時間がかかりそうだ。

大鹿の谷間や稜線でよく野営をする近年であるが、今回の場所は今のところベスト1。谷間の空間と川の流れる音のバランスがいい。天候の条件もよかったのかもしれない。あと3、4日は滞在してもいいかな、、、このように修験者は思って山籠りをしていたのかもしれない。

朝食をとり、装備を整えて天子岩を目指す。
今日は昨日の沢登りとまではいかない穏やかな遡上。川を飛び越えたり、川底の石のをうまく使って川を渡る。地形が興味深い。視界が狭くなったと思ったらまた開けてくる。呼吸をしているかのような空間の広がりを見せてくれる南股。

しばらく草地の右岸を行く。沢とまではいかないが水がしみ出ているようなところがいくつかありカツラが多く目につく。地質はずるずると安定していない感じ。遠まきに天子岩の全容を確認。中国の山水画にあるような、岩の塊が忽然と現れる。噂に違わず神秘的な眺めだ。あの頂を目指す。

天子岩に近付くと左岸の森の中を歩く。こちらは針葉樹中心の植生。ヤツガタケトウヒも目につく。

大きなサワラの木を目印に石灰岩の苔むしたガレ場をのぼっていくと天子岩の直下だ。ヤツガタケトウヒのバレリーナ。遠くには栂村山、前茶臼が望める。

さて、天狗様は何処かと付近を散策する。
資料によれは石塔があるはず。(もっとちゃんと目を通しておけばよかった)
ここで自分が修験者だったら、どこに設置するかを考えた。
天子岩の肩のようなところが気になったので、石灰岩の割れ目を利用して12メートルほど直登してみる。
眺めがいいが、天狗様は祀られておらず。いかーんせーん・・・
登ってみたものの、これは降りれるのか!?という状況。
足の感覚を頼りに下る。

やはり天子岩の頂かと、今度は石灰岩の壁をまいていく。
30分ほど急峻なトウヒの林をよじ登っていくと尾根に出た。
コメツガと赤松の根っこがねじねじと階段をつくって、天狗様まで案内してくれた。

石塔は倒れていたが、「小天狗 天子山大天狗神 山之神」とある。
台座には寄進した人の名前が刻まれ 昭和17年5月15日とある。

敗戦の年の3年前か、、、
いろいろな願い、祈りがあったのだろうと推察する。

里から担いできたきゅうりと塩とナッツとウイスキーを献上し、
しばし天狗様との語らいの時間。

「リ●アから里をお守りください」

「マカセトケ」

とのこと。

谷の日暮は早い。天狗様の住処を後にした。

【本日のコースタイム】
 ■ 8:13 幕営場所出発
 ■ 9:00 天子岩直下到着
 ■ 10:13 大天狗様の石碑到着(天子岩頂)
 ■ 10:50 大天狗様出発
 ■ 11:45 幕営場所戻り
 ■ 12:20 幕営場所出発
 ■ 13:13 燕岩
 ■ 14:13 青木川 駐車場

(青木川上流/個人的回想)
後で地質図を見てみたら、今回訪ねた青木川の上流は様々な地質がまぜこぜ(メランジェ)になっている。地質境界が散在することが分かった。
確かに川底はいろいろな岩があって目にもカラフルで楽しかった。
そして構成している岩石の性質によって空間的ひろがりが拡張したり収縮したりしていた。私たちは、いろいろな物質の特徴(エネルギーの性質)の影響を知らず知らずのうちに受けているのではないだろうか。「生物多様性の保全」が叫ばれているが小難しい内容は置いといて、感覚的にいうと、つまり!「いろいろなエネルギーがある」ということは私たちをとても「楽しい気分」にさせてくれるのだ。